仕事、家事、育児…と、毎日忙しい40~50代の主婦の皆さん。離れて暮らす高齢の親御さんのことが、気がかりではありませんか?
「最近、電話の声に元気がないような…」「ちゃんと食事をとっているのかしら?」「もしものことがあったら…」
そうした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
内閣府の調査によると、65歳以上の高齢者世帯のうち、単身世帯の割合は男性で約22%、女性では約40%にものぼります。 1 高齢化が進む日本では、今後も高齢者の単身世帯は増加の一途をたどると予想されます。 また、厚生労働省の発表によると、年間約10万人が親族の介護を理由に離職しており、政府が掲げていた「介護離職ゼロ」の目標は達成できていません。 2 政府は「孤立死防止推進事業」を各地で推進しており、高齢者の孤立を防ぐための取り組みが強化されています。 3
高齢者の一人暮らしには、様々なリスクが潜んでいます。 4 病気や怪我、事故はもちろんのこと、近年増加している孤独死も大きな社会問題となっています。 5
大切な親御さんに、いつまでも元気で安心して暮らしてもらいたい。そう願うのは当然のことです。
しかし、仕事や家庭を抱えながら、頻繁に実家へ足を運ぶのは難しい…という方も少なくないでしょう。
そこで今回は、離れて暮らす親御さんの見守りに役立つ方法をご紹介します。
高齢者の一人暮らしにおけるリスクとは?
高齢者の一人暮らしには、以下のようなリスクが考えられます。
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病気や怪我のリスク
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高齢になると、体力や免疫力が低下し、病気や怪我をしやすくなります。
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特に、一人暮らしの場合、体調の変化に気づきにくく、重症化してしまうケースも少なくありません。 4
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持病をお持ちの方や、最近物忘れが目立つようになったという方は、より注意が必要です。
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例えば、新聞配達員が異変に気付き、一人暮らしの高齢者が病院へ搬送され、脳梗塞が見つかったケースもあります。 6 早期発見ができていなかったら、命に関わる事態になっていたかもしれません。
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事故のリスク
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家の中や外出先での転倒、火の不始末による火災、交通事故など、高齢者は様々な事故に遭う可能性があります。 7
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体力や判断力の低下、視力や聴力の衰えなどが、事故のリスクを高める要因となります。
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高齢者の事故で最も多いのは転倒事故であり、次いで交通事故が多いというデータがあります。 7 また、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故では、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故が7.7%と高い水準にあります。 7
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孤独死のリスク
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一人暮らしの高齢者が、誰にも看取られることなく自宅で亡くなる孤独死。 5 近年、増加傾向にあり、大きな社会問題となっています。
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孤独死は、病気や事故だけでなく、孤独感や孤立感から、心身の健康を損なってしまうことも原因の一つと考えられています。 4
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2017年の東京都監察医務院の記録では、65歳以上の独居高齢者の死亡者数は3333人であり、10年前と比べて6割も増加しています。 8
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社会的な孤立のリスク
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人との関わりが減ることによる「孤独」も、高齢者が健康で充実した生活を送るうえでの大きなリスクになります。 4
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東京都健康長寿医療センターの調査では、他者との交流頻度が少ない高齢者は、そうでない高齢者に比べて、認知機能の低下に起因する死亡リスクが高くなるという結果が出ています。 4
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また、かつて内閣府が行った意識調査から、近所づきあいなどをしておらず、社会的に孤立している状態が長く続いた人には、生きがいを喪失したり、生活に不安を感じたりする傾向があることもわかっています。 4
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金銭管理のリスク
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高齢になると、判断能力の低下により、お金の管理が難しくなることがあります。 4
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認知症を発症すると、自分でも気が付かない間に無茶なお金の使い方をしてしまうことや高額な消費者被害に遭うこともあります。 4
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悪質な訪問販売や詐欺の被害に遭いやすいという点も、高齢者の一人暮らしにおけるリスクと言えるでしょう。
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介護が必要になった場合のリスク
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高齢になると、要介護状態になるリスクが高まります。 9
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一人暮らしの場合、介護サービスの利用や、家族のサポートが必要になりますが、経済的な負担や、家族の負担が大きくなってしまう可能性があります。 10
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特に、子供が遠方に住んでいる場合などは、介護の調整が難しく、親御さんに負担をかけてしまうケースも少なくありません。 2
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法的・金銭的な問題のリスク
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高齢になると、判断能力の低下により、契約や遺産相続などでトラブルに巻き込まれるリスクがあります。 11
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例えば、銀行から「高額な出金が続いているため、窓口に来てください」と連絡があり、認知症の父親の財産管理を任されていた息子が慌てて銀行へ行ったというケースもあります。 11
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判断能力が低下した状態での契約は、後々トラブルになる可能性もあるため、注意が必要です。
孤独死を防ぐために
高齢者の孤独死は、近年深刻化している社会問題です。 親御さんに限らず、高齢者の孤独死が増加している背景には、核家族化や地域社会の希薄化、経済的な困窮など、様々な要因が考えられます。
孤独死を防ぐためには、以下のような取り組みが重要です。
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定期的な連絡・訪問
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離れて暮らしていても、定期的に連絡を取り合ったり、訪問したりすることで、親御さんの様子を確認することができます。
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また、親御さんの話をじっくり聞いて、悩みや不安を共有することも大切です。
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地域とのつながり
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地域の行事や活動に参加したり、近所の人と交流したりすることで、社会的な孤立を防ぐことができます。
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地域包括支援センターや民生委員など、地域の見守り活動に協力してもらうことも有効です。
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見守りサービスの利用
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安否確認サービスや見守りカメラなど、様々な見守りサービスを利用することで、異変にいち早く気づくことができます。
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特に、親御さんの健康状態や生活状況に不安がある場合は、積極的にサービスの利用を検討しましょう。
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行政の支援
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各自治体では、高齢者の孤独死を防ぐための様々な取り組みを行っています。
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例えば、相談窓口の設置や、見守りサービスの提供、地域の見守り活動への支援などがあります。 3
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必要に応じて、行政の支援制度を利用しましょう。
孤独死は、決して他人事ではありません。 早期に適切な対策を講じることで、孤独死のリスクを減らすことができます。
親御さんを見守る方法は?
離れて暮らす親御さんを見守る方法は、大きく分けて以下の3つがあります。
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定期的な連絡
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訪問
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見守りサービスの利用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 定期的な連絡
電話やメール、LINEなどで、定期的に親御さんと連絡を取り合いましょう。
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毎日、決まった時間に電話をかける
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週に1回は、ビデオ通話で顔を見ながら話す
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メールやLINEで、近況を報告し合う
など、親御さんの状況に合わせて、無理のない範囲で続けられる方法を選びましょう。
最近では、高齢者でも簡単に操作できるコミュニケーションツールも登場しています。 12
例えば、「memet」という製品は、ボタンを押すだけで事前に登録した3人(家族など)に連絡できるシンプルなデバイスです。 12 スマートフォンやタブレットの操作が苦手な親御さんでも、安心して使えます。
また、NTTドコモの「ちかく」は、テレビに接続するだけで利用できるコミュニケーション端末です。 12
「ちかく」には、ビデオ通話やメッセージの送受信、写真や動画の共有といった機能があり、離れて暮らす家族とのコミュニケーションを円滑にします。 最大4人でのグループビデオ通話も可能なので、複数人で親御さんの様子を確認することもできます。 12
高齢者向けコミュニケーションツール
製品名 |
提供会社 |
特徴 |
memet |
アイ・オー・データ機器 |
ボタンを押すだけで事前に登録した3人に連絡できるシンプルなデバイス |
ちかく |
NTTドコモ |
テレビに接続するだけで利用できるコミュニケーション端末。ビデオ通話やメッセージの送受信、写真や動画の共有などが可能 |
2. 訪問
可能な限り、実家へ足を運んで、親御さんの様子を直接確認しましょう。
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月に1回は、顔を見に行く
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一緒に食事をしたり、買い物に行ったりする
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家の掃除や洗濯を手伝う
など、親御さんと一緒に過ごす時間を大切にしましょう。
訪問の際には、家の周りの環境や、親御さんの生活の様子をよく観察することが大切です。
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郵便物が溜まっていないか
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冷蔵庫に食品が入っているか
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服装や身だしなみに変化はないか
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怪我や体調不良はないか
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家の中が整理整頓されているか
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転倒しそうな場所はないか
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火の元の扱いは大丈夫か
など、些細な変化も見逃さないようにしましょう。
また、親御さんの家の安全性を確認することも重要です。
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手すりの設置
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トイレや浴室、階段など、転倒しやすい場所に手すりを設置することで、事故のリスクを減らすことができます。
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段差の解消
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家の中の段差を解消することで、つまずきや転倒を防ぐことができます。
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滑り止めマットの設置
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浴室や玄関など、滑りやすい場所に滑り止めマットを設置することで、転倒のリスクを減らすことができます。
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照明の明るさ
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部屋の照明を明るくすることで、転倒や物の落下による事故を防ぐことができます。
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火災報知器の設置
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火災報知器を設置することで、火災発生時にいち早く気づくことができます。
これらの対策を講じることで、親御さんが安心して暮らせる環境を整えることができます。 13
3. 見守りサービスの利用
近年、様々な見守りサービスが登場しています。
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安否確認サービス
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定期的に電話や訪問で安否確認を行うサービスです。 14
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異変があった場合は、すぐに家族や関係機関に連絡してくれるので、安心です。
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例えば、新聞配達員が配達時に安否確認を行うサービスや、地域の見守り volunteers が定期的に訪問するサービスなどがあります。
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見守りカメラ
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自宅にカメラを設置し、親御さんの様子を映像で確認できるサービスです。 15
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異常を検知すると、スマートフォンに通知してくれる機能が付いたものもあります。
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留守中の親御さんの様子を確認したり、異変があった際にすぐに対応したりすることができます。
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センサー
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人感センサーやドアセンサーなどを自宅に設置し、親御さんの活動状況を把握できるサービスです。 16
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例えば、一定時間動きがない場合は、家族に通知が来るようになっています。
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また、玄関や窓の開閉を感知して、侵入者や徘徊を知らせてくれるセンサーもあります。
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GPS
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GPS機能を搭載した端末を親御さんに持ってもらうことで、外出時の位置情報を確認できるサービスです。 17
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道に迷ったり、徘徊したりする心配がある場合に役立ちます。
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徘徊の範囲を設定しておけば、範囲外に出た際に通知を受け取ることもできます。
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緊急通報サービス
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親御さんが緊急時にボタンを押すだけで、救急や警察に通報できるサービスです。 18
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ペンダント型や腕時計型など、様々なタイプの端末があります。
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緊急時に助けを求めることができない場合でも、ボタン一つで通報できるので、安心です。 19
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見守りロボット
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近年注目されているのが、AIを搭載した見守りロボットです。 20
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見守りロボットは、親御さんとコミュニケーションをとったり、生活のサポートをしてくれたりします。
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例えば、「ユピ坊」は、音声認識機能を搭載しており、親御さんと会話をすることができます。 21 また、「BOCCO emo」は、家族間のメッセージのやり取りや、リマインダー機能など、様々な機能を備えています。 21
これらのサービスを組み合わせることで、よりきめ細やかな見守りが可能になります。
親御さんの見守りに役立つサービス一覧
サービス |
概要 |
費用 |
対象者 |
例 |
リンク |
安否確認サービス |
定期的な電話や訪問で安否確認 |
月額数千円~ |
一人暮らしの高齢者 |
新聞配達員による安否確認、地域の見守り volunteers による訪問 |
各市町村の地域包括支援センター、民生委員 |
見守りカメラ |
自宅にカメラを設置し、映像で確認 |
数万円~(初期費用)+月額利用料 |
一人暮らしの高齢者、認知症の方 |
パナソニック「ホームネットワークシステム」、セコム「みまもりホン」 |
各家電量販店、セキュリティ会社 |
センサー |
人感センサーなどで活動状況を把握 |
数万円~(初期費用)+月額利用料 |
一人暮らしの高齢者、認知症の方 |
アルソック「まもるっく」、ALSOK「みまもりサポート」 |
各セキュリティ会社 |
GPS |
位置情報を確認 |
端末代+月額利用料 |
徘徊の心配がある方 |
ソニー「wena 3」、アップル「AirTag」 |
各家電量販店、携帯電話会社 |
緊急通報サービス |
緊急時にボタンで通報 |
端末代+月額利用料 |
一人暮らしの高齢者、病気の方 |
ケアコム「あんしんコール」、テルモ「みまもりステーション」 |
各家電量販店、セキュリティ会社 |
※費用は、サービス内容や事業者によって異なります。
親御さんに合った見守り方を見つけよう
離れて暮らす親御さんの見守りに、正解はありません。
親御さんの性格や健康状態、生活環境、そして家族の状況などを考慮して、最適な方法を選びましょう。
大切なのは、親御さんの気持ちを尊重することです。 13
「見守られている」と感じさせすぎると、親御さんのプライドを傷つけたり、反発を招いたりする可能性もあります。
そのため、見守る際には、親御さんとよく話し合い、納得してもらえる方法をとることが大切です。
もし、親御さんが見守りサービスの利用に抵抗がある場合は、まずは定期的な連絡や訪問から始めて、徐々に慣れてもらうようにしましょう。
また、親御さんの意見を尊重しながら、一緒に見守り方について考えることも重要です。
まとめ
離れて暮らす親御さんの見守りは、決して簡単なことではありません。
しかし、今回ご紹介した方法を参考に、親御さんに合った見守り方を見つけることで、安心感を高め、親子の絆を深めることができるでしょう。
親御さんの見守りは、家族だけで抱え込むのではなく、地域や行政、専門機関などのサポートを活用することも大切です。
もし、介護や見守りについて悩んでいることがあれば、一人で抱え込まずに、相談窓口に連絡してみましょう。
様々な相談窓口があり、専門家が親身になって相談に乗ってくれます。 22
主な相談窓口
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地域包括支援センター
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市町村の介護保険課
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都道府県の介護相談窓口
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厚生労働省の相談窓口
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法テラス
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高齢者虐待防止センター
親御さんが安心して暮らせるように、そして、あなた自身も安心して生活できるように、積極的に情報収集を行い、適切なサポートを受けながら、親御さんの見守りに取り組んでいきましょう。